【活動報告】国連の独立専門家の報告書にTネットら日本の団体のレポートが反映されました

2026年02月26日

2025年11月、国連の「性的指向および性自認(SOGI)に関する独立専門家」グレアム・リード氏は、世界中の教育現場におけるLGBT等の児童生徒の権利状況に関する最新報告書を国連総会に提出しました。

本報告書の作成に先立ち、日本の教育現場におけるトランスジェンダー生徒の困難や、制度上の課題について日本の団体(Tネット一般社団法人にじーずProud Futures認定NPO法人 ReBit)は情報収集を行い、独立専門家チームへ事前にレポートを提出しました。本報告書の中では、私たちが国連専門家に送ったレポートが参考資料として6箇所で引用されています。私たちの届けた日本の当事者の声が、国際的な人権基準の策定に寄与できたことをうれしく思います。

国連の独立専門家による報告書の内容

今回の報告書の概要は、以下の通りです。

1) 教育を受ける権利は基本的な人権

教育を受ける権利は、すべての人に認められた基本的な人権であり、差別なく教育にアクセスできることはさまざまな権利の実現のために欠かせないものである。教育を受ける権利の実現にとって、安全な学習環境はその前提となる。

2) LGBTの児童生徒が直面する障壁

しかしながら、現状ではLGBTの児童生徒が、教育現場で様々な差別や障壁に直面している。

  • 蔓延する暴力といじめ
    LGBTの児童生徒は生徒間だけでなく、しばしば教師からも、からかい、暴力、嫌がらせなどを受けており、これが不登校やメンタルヘルスの悪化、中退率の上昇、将来的な機会の制限を招いている。
  • トランスジェンダーの児童生徒の困難:
    性自認に合った名前、服装(制服)、施設の利用が拒否されることが、教育へのアクセスを妨げる大きな障壁となっている。
  • 「沈黙」を強いる教育:
    性的指向・性自認について話すことや教えることを制限する法律や社会風土、性教育プログラムの排除などがあり、正確な情報の普及を妨げている。これは、すべての児童生徒の教育機会に悪影響を及ぼしている。学校現場で性的指向や性自認に関する適切な教育を行うことで、スティグマをなくし、理解をすすめ、より包摂的な教育環境を作ることができる。

3) 国・教育当局への勧告

上に挙げたような教育現場の問題は、国の法律や政策、そして影響力ある政治家による敵対的・差別的な発言などによっても深刻化する。国はSOGIに基づくいじめ・嫌がらせ・排除を予防・是正・救済する義務を有しており、各国政府や教育機関に対して、次のような措置をとることが求められる。

<以下、教育現場に直接かかわる勧告の抜粋(※)>

  • 差別を禁止する包括的な法制度の整備
  • 教師や管理職への適切な研修
  • 安全で包摂的な学習環境の確保

(例:全ての生徒の安全、尊厳、快適さを確保するために性別を問わずに使えるトイレや更衣室を含む包括的な施設を設置すること、SOGIの多様性を反映している発達段階に即した多様な書籍、学習素材を教室や学校などに備えることなど) 

  • 包括的性教育の実施 
  • トランスジェンダーの児童生徒の包摂

(例:生徒が罰せられることなく自由に性自認を表現できるよう、制服・服装・外見に関する規定や基準における性別要件をなくすこと、通称名が使えることなど)

(※)他には性的指向や性自認に関する矯正療法の禁止や、同性間の性行為の非犯罪化など、勧告の内容は広範囲に渡っています。

SOGIのあり方に関わらず子どもが安心して学べる環境を

日本の教育現場の現状をこの報告書に照らしてみると、以下の課題が見えてきます。

まず、現状として、日本ではLGBTの児童生徒の不登校の多さ、いじめ経験率や希死念慮の高さなどが報告されており、学校が安全な環境になっていないことが背景として伺えます。また、文部科学省の「学習指導要領」は、未だにLGBT等の性的マイノリティについて明示的に触れていません。

現行の小中学校の保健体育では、思春期になると異性への関心が高まることのみを明示的に言及しており、多様な性的指向や性自認のあり方については触れず、またアウティングなどの危険性についても言及していません。

その結果、多くの子どもたちが自らのアイデンティティを否定されたまま、過酷な学校生活を余儀なくされていると考えられます。また、身近にLGBTの当事者がいることを学ぶ機会が得られないまま、多くの児童生徒が大人になり、無自覚の偏見を強化してしまうことも懸念されます。

性的指向や性自認のあり方に関わらず、子どもが安心してのびのびと学ぶ権利が保証されるよう、日本でもこの勧告が真摯に受け止められ、活用されることを期待します。