【声明】東京高裁による性同一性障害特例法5号要件違憲決定を受けて

2025年11月12日

 2025年10月31日、東京高等裁判所は、トランスジェンダーの女性による法的な性別変更の申立てについて、性同一性障害特例法において定められた性別変更の要件のひとつである「その身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観を備えていること」(以下、5号要件)との規定をこの申立人に対して適用することは違憲であるとの判断を示し、申立人の性別変更を認める決定を下しました。
 この決定において裁判所は、合理的理由からホルモン療法を受けられない、または受けても近似した外観を得られないというケースに限定して、5号要件を適用するのは違憲であると判断しました。高等裁判所における5号要件の違憲判断が確認されたのは初めてです。

 Tネットはこの決定を、出生上の性とは異なる性で生活を送るトランスジェンダーの人々が直面する様々な困難を改善するものとして評価します。

 一方で、5号要件はその規定自体が合理性を欠くものであり、今回と同様のケースに限って問題とされるものではないと考えます。現に、2025年9月には札幌家庭裁判所が、5号要件の規定そのものを違憲とする判断を示しています。今後、全国の裁判所において、規定そのものの違憲性について積極的な判断がなされることを期待します。

 5号要件に関する【問題の背景】と【注意点】については、札幌家庭裁判所の決定に関する声明(リンク)を参照してください。

本件についてのお問い合わせ先
メール:Transgender.Network.jp(※注:間にアットマーク)gmail.com(事務局メールアドレス)

本声明PDFは以下よりダウンロードできます。

Tネットについて

 Tネットは、トランスジェンダーに関する情報発信に取り組んできた当事者ら有志によるネットワークで、2024年8月に発足しました。代表は、木本奏太、野宮亜紀の2名が共同で務めています。今後、トランスジェンダーを取り巻く社会環境の変化を踏まえて、情報発信や提言、イベント、学習会、メディア向けセミナーの開催などを行っていく予定です。また、Webサイトでの情報発信についても、今後充実させていく予定です。

木本奏太<プロフィール> YouTuber/映像クリエイター。大阪芸術大学映像学科卒。YouTubeチャンネル「かなたいむ。」にて活動。トランスジェンダー男性、25歳で性別適合手術をし、現在は戸籍上も男性として生活。「映像を通して誰かの何かのきっかけに」と、SNSでLGBTQ+、耳の聞こえない両親との生活、ありのままの日常などを発信。

野宮亜紀<プロフィール> 1998年からトランスジェンダーの自助・支援グループに運営メンバーとして携わり、2000年から東京レズビアン&ゲイパレードの実行委員、その後、パレードの主催団体であった東京プライドの理事を務める。2005年から大学で非常勤講師としてジェンダー、セクシュアリティについての講義を担当。

Webサイト ※仮開設中です。今後、情報発信を充実させていく予定です。